2018/8/27

年次有給休暇の付与義務

 
 6月に成立した働き方改革関連法案の1つに年次有給休暇の付与義務(労基法39条)がある。2019年4月から、年休付与日数が10日以上ある労働者に対して、使用者が5日分を時季指定しなければならないというものだ。ただし、労働者の方から時季指定した場合や計画的付与が行われた場合は、それらの合計から5日を差し引いた分でよい。たとえば、3日の計画的付与があるなら、使用者による時季指定は2日でよいということだ。

 年休は本来、労働者の権利として与えられているのだから、堂々と行使すればよいだけの話しなのだが、「和を以て貴しとなす」わが国では年休取得は遅々として進まない。年休取得率は50%弱を推移しており、長期的には下がり気味である。政府目標の70%に向けて、ついに法律による強制取得に至ったというわけだ。理想からすると望ましくはないが、実際に労働環境の改善につながる施策として評価すべきだろう。少なくとも5日は気兼ねなく確保できるのだ。

 というわけで労働者にとっては歓迎すべき改正なのだが、一方で運用する企業・担当部署にとっては新たな負担が増えることになる。

 最大の負担は年休の管理で、対象となる社員の取得状況を逐一チェックしなければならなくなる。もちろん、これまでもチェックはしていただろうが、これからは最低5日は消化してもらわなければならず、また、違反には罰則(30万円以下の罰金・労基法120条)もあるので、より綿密なチェックが必要となる。うっかりすると、権利期間の最後にまとめて付与することになり、業務に支障をきたすといった事態にも陥りかねない。
 年休の基準日が統一されていればまだよいが、中途入社がたくさんいて、基準日がバラバラだと管理は一層大変である。

 こういった事態を避けるためには、年間を通して5日分を計画的に取得させる仕組みづくりが重要である。
 計画的付与が一番だが、計画的付与にしなくても、年初に会社(上司)と社員とで話し合い、5日分の時季指定をするという方法でもよいだろう。1年間だと予定が立てづらいのであれば、4半期ごとでもかまわない。
 基準日については、全社員を年1回(たとえば10月1日)あるいは2回(たとえば4月1日と10月1日)で統一するのが望ましい。入社初年度の付与の仕方が課題となるが、いろいろと工夫はできる。

 政府は2020年に年休取得率70%という目標を掲げているが、2016年で49.4%と20ポイントものギャップがある。2020年の目標達成は困難にしても、本改正によりどこまで数値を上げられるだろうか。「年休取得日数ゼロの労働者割合16.4%(2011年)」がどうなるかとともに注目しておきたい。



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