2018/8/20
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裁量労働制の自主点検結果 |
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先日、厚生労働省が裁量労働制の運用の適正化に向けた自主点検結果を公表した。 自主点検は今年の2月に対象企業に依頼していたものだ。厚労省が、労働時間等の運用状況について企業に自主点検を求めることはときどきあるが、今回は、働き方改革法案の審議の中で裁量労働制が注目を集め、その適正運用が問題となったことが背景にあるのは間違いない。 対象事業場数は12,167(企画業務型:2,917、専門業務型:9,250)である。企画業務型は、「裁量労働制に関する報告」を提出した事業場で、専門業務型は「裁量労働制に関する協定」を届け出た事業場なので、裁量労働制を導入している全事業場に対して行ったということだ。400万に上る日本の企業数に対して、導入企業がいかに少ないかがわかる。 それはともかく、点検結果を提出した事業場数は10,793(企画業務型:2,789、専門業務型:8,004)で、そのうち改善が必要と考えられる事業場は、企画業務型が332(提出事業場の11.9%)、専門業務型が1,945(同24.3%)ということである。企画業務型の方が割合が低いのは、大企業が多く、運用体制がしっかりしているからではないかと思う。 具体的な点検項目は以下の7つである。 ①対象労働者が従事している業務 ②対象労働者について ③みなし労働時間 ④労働時間の状況 ⑤法定休日労働・深夜労働 ⑥健康・福祉確保措置 ⑦決議の周知状況 これらの項目に対して、それぞれ不適切な状況を示し、該当事業場のパーセンテージを示している(下記は①の例)。
他の項目を見ても、該当企業は5%未満で、不適切な運用はあまり見られない。これだけをとらえると、運用状況にそれほど問題はないようにも見えるが、次のような疑問点も指摘できる。 ・最大の懸念である長時間労働の実態が不明である。 ・とりあえず問題なしで報告した後、改善を図る事業場もあると考えられる。 ・あくまで企業側の報告で、労働者の意見は反映されていない。 今回の点検は、使用者自らが裁量労働制の運用の実態を確認し、問題がある場合の自主的改善と、改善が見込めない事業場への監督指導により、改善を促していくことを目的としている。確かに、いつまでに改善するのかという改善予定日を明記させていることから、現状をよくする効果はあるだろう。ただ、点検の意味はこれだけではない。 働き方改革法案から削除された裁量労働制の見直しは、近い将来に復活するはずである。その際、今回の結果は裁量労働制の実態を示す有力な資料となるだろう。個別の項目では違反はほとんどないものの、全体で見ると企画業務型で約10%、専門業務型では約25%と決して誇れる数値ではない。政府や厚生労働省としては、簡単には見直しを進められないことを改めて認識しているに違いない。 過去記事は⇒ミニコラムもご参照ください。 お問い合わせは⇒お問い合わせフォームをご利用ください。 |
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