2018/7/17
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高度プロフェッショナル制度が法制化~その2 |
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高度プロフェッショナル制度のメリット・デメリットをまとめると次のようになる。
●会社のメリット ・割増賃金の計算や支払いが不要となる。 ●労働者のメリット ・労働時間や時間配分を自分で決められる。 ・労働時間ではなく、成果で評価してもらえる。 ●会社のデメリット ・コンプライアンスリスクが増大する。 ・制度要件を満たすための手続が煩雑となる。 ●労働者のデメリット ・過労や成果追求のストレスにより健康が悪化するおそれがある。 ・消極的な同意の場合、モチベーションが低下する。 要は、制度を活かせる人には良い制度だが、活かせない人には悪い制度ということだ。そしておそらく、現状の労働者の実態からして後者の方が多いと思われ、そのことが懸念される。 他の留意点として、裁量労働制との違いを指摘しておきたい。 裁量労働との違いは、裁量労働は労働時間規制の枠内の制度であるのに対して、高プロ制度は規制の枠外にあるという点だ。裁量労働は、時間外・休日労働や深夜労働の割増賃金等が支給されるし、休憩もある。高プロ制度はそのような規制がないことになる。たとえば、時間外労働という概念がなくなるので、36協定も不要だし、今回の改正で取り入れられた残業上限規制も関係ない。 さらに、管理監督者よりも適用除外の範囲が広いことに注意したい。管理監督者は労働時間・休日に関して規制を受けないが、深夜労働は規制対象である。したがって、高プロ制度適用者の部下と深夜労働をした場合、上司には深夜割増が支給され、部下は支給なしといったケースも起こり得る。 本制度は2019年4月から施行されるが、対象者が少ない(年収1千万円以上は管理職を含めて民間労働者の3%)ことに加え、どちらかといえば厳しい視線からの注目度も高いため、とりあえず導入を見送る企業が多いのではないかと思う。積極的に導入するとすれば、転職が当たり前の外資系や既存制度にしがらみのない新規企業が中心となるだろう。 今後の焦点は、対象者の拡大である。具体的な年収要件は省令で変更できるとはいえ、「労働者1人当たりの給与の平均額の3倍を相当程度上回る水準」は法律に規定されていることなので、たとえば600万円以上に引き下げるには、法改正が必要となり、簡単にできるわけではない。むしろ対象業務の拡大の方が現実的と思う(ただ、いずれは法改正により、年収要件を引き下げることはありうる)。 また、一方で裁量労働制の対象拡大も行われるはずだ。これについては、本日(7月17日)の日経新聞に「裁量労働制仕切り直し」との見出しで、厚労省が再検討を始める旨の記事があった。 労働時間柔軟化の流れは、もはや既定路線といえるだろう。 過去記事は⇒ミニコラムもご参照ください。 お問い合わせは⇒お問い合わせフォームをご利用ください。 |
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