2018/6/5

育児休業を取らない女性が2割

 先日、厚生労働省から2017年度「雇用均等基本調査」が公表され、育児休業取得者の割合(=育児休業取得率※)が、女性83.2%(対前年度1.4ポイント上昇)、男性5.14%(同1.98ポイント上昇)となったことがわかった。

※育児休業取得率とは、出産者のうち、調査時点までに育児休業を開始した者(開始予定の申出をしている者を含む。)の数÷調査前年度1年間の出産者(男性の場合は配偶者が出産した者)の数である。出産者にカウントするのは常用労働者(期間の定めのない者や1ヶ月以上の期間雇用者など)である。

 「ようやく男性が5%を超えた」というのも1つのトピックだが、ここではあえて女性の数字を取り上げたい。普段、企業の方と話をしていると、出産をした女性社員が育児休業を取るのはごく当り前のことで、そうでない人が2割弱もいることにちょっとした驚きを感じたからだ。

 この平成19年以降の女性の取得率をあらためて確認してみると、以下のようになる。
 年度
 19
20
 21
 22
23 
 24
 取得率
 89.7
 90.6
 85.6
 83.7
 87.8
 83.6
 年度 
 25
26 
27 
28 
29 
 
 取得率
83.0 
 86.6
 81.5
 81.8
 83.2
 

 平成29年度は上昇しているものの、平成20年度をピークにむしろ下がり気味であることに気づく(なお、その前は平成8年度49.1%以降、明らかに上昇傾向にあった)。ワークライフバランスの浸透で育児休業者の取得率が増えているかと言えば、そうでもないのだ。

 取得をしない理由として考えられるのは次の3つである。

1.育児休業法の適用対象外のため
 適用除外となるのは大きく2つの場合があり、1つは期間雇用者で次のいずれにも該当する労働者以外の者である。
 ①雇用期間が1年以上
 ②子が1歳6か月に達する日までに、労働契約が満了することが明らかでない者

 もう1つは労使協定による適用除外で、次のいずれかに該当する労働者である。
 ①雇用されてから1年未満の者
 ②休業申出があった日から起算して1年以内に雇用関係が終了することが明らかな者
 ③1週間の所定労働日数が2日以下の者

 ちなみに、2016年度の同調査によると、有期契約労働者のうち制度の対象となる労働者は83.7%ということである。2017年1月に期間雇用者の要件が緩和されたことも踏まえると、対象外の者の割合は、有期契約労働者のうちの10数パーセントと考えられる。

2.育児休業法の適用対象だが、あえて取らない
 仕事をバリバリしたい、早く復帰してキャリアを積みたい、など積極的な理由で取得しないケースである。両親が近くにいるなど、育児を頼める環境があることも大切だろう。ただ、このケースは少数ではないかと思う。もちろん、理由の一部としてはあるかもしれないが、多くを占めるのは次の理由ではないだろうか。

3.育児休業法の適用対象だが、取りたくても取れない
 理由としては、仕事が忙しい、取れる雰囲気ではない、会社に制度・規定がない、給与が減るのが困るなどだろう。先に示したように、このところ取得率が低下気味なのは、人手不足による多忙で取りづらいというのが最大の要因かもしれない。

 「会社に制度・規定がない」ことに関して、育児休業の付与は会社の義務なので、それは理由にならないのは言うまでもない。とはいえ、規定がないことから、自社には制度がないと思っている社員はいるだろう。実際、育児休業制度の規定の有無で取得率をみると、「あり」の85.1%に対して「なし」は49.5%と極端に低い数値となっている。

 現在、育児休業を取りやすくするために、分割取得の制度化が検討されている。主に男性の取得促進のためだが、女性の取得率の再向上も必要だと思う。特に「取りたくても取れない」社員にしっかりと対応してほしいものである。


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