2024/3/31

採用力を高める人的情報の開示

 来春入社の学生への企業説明会が3月に解禁となった。中小企業の新卒採用が厳しい状況にあることはこのコラムでも述べたところ(「厳しい中小企業の新卒採用」)だが、採用力を高めるのに有効なのが適切な情報開示である。

 さまざまな企業情報の中でも、働く環境がホワイトかブラックかの判断材料となる人的情報への関心は高い。就活生のそのニーズに適切に応えることは、採用を優位に進めるための第一歩ともいえる。積極的な開示により、他社との差別化を図ってほしいものだ。

 ただ、やみくもに開示をしても無駄打ちになる可能性が高い。情報開示にあたって、どのような手段で、どのような情報を開示するか、ポイントを整理しておきたい。

 まず、学生がどのような手段で採用に関する情報を得ているかといえば、リクルート就職未来研究所の「就職白書2024」によると、「個別の企業・各種団体等のホームページ」が75.4%で、「就職情報サイト、就職情報アプリ」49.5%を引き離しての圧倒的トップとなっている
(複数回答)。まあ、まずはHPを確認しようとするのは、当たり前と言えば当たり前である。ということで、自社のホームページを基軸に開示するのか適切といえるだろう。

 それでは次に、どのような情報を開示すべきかである。同白書の「就職活動で知りたいと思っていた情報」の中で、人的情報に関するものを抽出すると以下の通りだ(複数回答)。なお、カッコ内は「就職活動で知ることができた情報(複数回答)」である。

・有給休暇の取得日数・取得率53.7%(48.0%)
・所定外労働時間(残業など)の実績50.7%(42.8%)
・平均勤務年数40.5%(38.4%)
・離職者数または離職率38.8%(30.7%)
・正社員の平均年齢29.5%(36.7%)
・社内研修・自己啓発支援の有無とその内容24.6%(28.0%)
・男女別の従業員数24.3%(35.2%)
・男女別の育児休暇取得状況23.2%(29.1%)
・女性役員の割合15.7%(23.6%)

 労働時間や休暇、離職状況に高い関心があることがわかる。そして、いずれも「知りたい情報」>「知ることができた情報」となっており、企業が学生の期待に応えられていない傾向にあることがわかる。特に残業実績と離職者数・離職率はギャップが大きい。学生が知りたい事項であるにもかかわらず、企業が情報開示を避けているかのようにも映る。

 企業としては、このような数値のうち、自信のあるものを開示したいと考えるはずだ。残業実績や離職者数・離職率は自信のない数値なのだろう。

 ただ、出さないということは、学生からすれば「わからない」ということで、好ましいことではない。比較対象企業が出していた場合は、相対的に自社の印象が悪くなる可能性もある。たとえ、悪い数値であっても、しっかり開示し、今後改善していく姿勢を見せることの方が学生の心に響くと思うのだが。

 さて、ここまで人的情報の開示の必要性を述べてきたが、それ以前の問題として、採用実績や採用条件などの基本情報さえ、何年間も更新していない企業もある。そういった企業は、ぜひ、それを目にしたときの学生の気持ちを想像してほしいものである。    

 


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