2018/6/11
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同一労働同一賃金の最高裁判決~その1 |
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注目されていた同一労働同一賃金についての2件の最高裁判決が6月1日に行われた。正社員と非正規社員との待遇格差をめぐる初めての最高裁判決である。
判決内容は、総合的に見れば労働側の主張が認められたといえるが、労働側にとって厳しい内容も示された。ただ、ある程度想定された内容であり、特に驚きを与えるものはなかったのも確かである。 それはともかく、最高裁判決が出たからには、これがスタンダードになるということだ。もし、現状の制度が著しく異なるようであれば、見直しも必要となる。その意味で非常に重要な判決であることは間違いない。本コラムでは、2回に分けてそのポイントを整理したい。 訴訟は、運送会社「長沢運輸」(横浜市)の定年再雇用者の乗務員と、物流会社「ハマキョウレックス」(浜松市)の契約社員の運転手が、正社員との同一待遇を求めてそれぞれ会社を相手に訴えていたものだ。 今回は、「長沢運輸」の要旨を確認してみよう。 まず、定年制の下における無期契約労働者の賃金体系と、定年退職後に再雇用される有期契約労働者の賃金体系とが違って然るべきことを指摘したうえで、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理かどうかを判断する際、有期契約労働者が定年退職後の再雇用者であることは、労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮する必要があると示した。 次に、労働条件格差が不合理かどうかは、賃金の総額を比較するだけでなく、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきとし、以下のような判断を下した。 ●能率給・職務給の不支給 嘱託乗務員の基本賃金および歩合給が、正社員の基本給、能率給および職務給に対応するものであることや、それらとの差が少額であることなどから不合理ではない。 ●精勤手当の不支給 嘱託乗務員と正社員との職務の内容が同一である以上、両者の間で、その皆勤を奨励する必要性に相違はないことから不合理である。 ●住宅手当・家族手当の不支給 嘱託乗務員と異なり、正社員には幅広い世代の労働者が存在することから、住宅費および家族を扶養するための生活費を補助することには相応の理由がある。一方で、嘱託乗務員には、老齢厚生年金の支給や支給開始までの調整給があるため不合理ではない。 ●役付き手当の不支給 正社員の中から指定された役付者に対して支給されるものであるため不合理ではない。 ●超勤手当(※時間外手当の意)の不支給 嘱託乗務員の時間外手当の計算基礎に精勤手当が含まれなていないため不合理である。 ●賞与の不支給 嘱託乗務員は定年退職後に再雇用された者であり、退職にあたって退職金の支給を受けているほか、老齢厚生年金の支給や支給開始までの調整給がある。また、嘱託乗務員の年収は定年退職前の79%程度となっていることから不合理ではない。 企業の視点から見れば、いくつかの手当不支給について違法性を指摘されたのは残念なものの、賞与の不支給が認められたのは「ほっと一息」というところだろう。ただ、安心はしていられない。その点については、次回、「ハマキョウレックス」の判決要旨を整理したうえで総括したい。 過去記事は⇒ミニコラムもご参照ください。 お問い合わせは⇒お問い合わせフォームをご利用ください。 |
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