2025/11/16

職場デジタル化のデメリット

 職場のデジタル化が進んでいるのは、経営者・社員を問わず、多くの人の認識だろう。エン・ジャパンが派遣社員を対象に実施した「職場のデジタル化」調査(2025)では、「あなたの職場ではデジタル化が進んでいると感じますか?」との質問に66%が「感じる」(感じる:38%、どちらかといえば感じる:28%)と回答している。

 その内容として挙げられたのは、トップは「ペーパーレス化」(81%)で、以下、「オンライン会議・ウェビナーの活用」(56%)、「ビジネスチャットツールの利用」(50%)、「クラウド上でのデータ管理」(48%)と続く。

 デジタル化が進むのは何らかメリットがあるからで、これについては、「データの保管・管理が楽になる」(64%)、「情報共有がしやすくなる」(61%)、「仕事がシンプル・簡単になる」(53%)が上位に挙がっている。これらのメリットは、程度の差はあれ多くの社員が実感しているはずだ。

 もっとも、物事には表もあれば裏もある。メリットの陰で見落とされがちなデメリットも存在する。

 まず思いつくのは、人間関係・コミュニケーションが希薄化することだ。メールやチャットツール中心のやりとりになると、ちょっとした雑談や確認の機会が減り、メンバー間の信頼関係やチームの一体感が弱まる可能性がある。特に在宅勤務やリモート環境では、孤立感が深まるおそれがある。最近、コロナ禍で進展したテレワークから原則出社への回帰が起きているのも、これらを懸念してのことと考えられる。

 次に、デジタル格差の拡大である。社員の年齢や職種によって、デジタル機器やシステム操作への習熟度に差があり、逆に業務効率が下がる懸念がある。苦手意識を持つ人ほど、導入に抵抗感を示し、結果としてますます格差が拡大する。置き去りにされた社員は居場所がなくなり、肩身の狭い思いをすることになる。そのような社員の存在は、組織にとって好ましいことではない。

 3つ目は、デジタル化そのものに起因するリスクの増大である。これには2つあり、1つはセキュリティリスクの増大である。クラウドやモバイル機器を使う機会が増えることで、誤送信や不正アクセス、持ち出しデータの漏えいなどのリスクが高まる。特に中小企業では、セキュリティ対策が遅れがちで、そのリスクは大きい。

 もう1つは、システム依存による障害リスクである。システム障害やネットワーク不調が起きた際に、業務が停止するリスクがある。アナログであれば、工夫により業務を継続することもできようが、デジタルだと業務が完全にストップしてしまい、手も足も出なくなる可能性がある。復旧も自社で対応できればよいが、障害時はITベンダー任せの企業が多く、早急の対応ができずに事態を悪化させるリスクが高い。

 エン・ジャパンの調査では、「職場でデジタル化が進むことに対して不安を感じますか?」との質問に、4人に1人(26%)が「はい」と回答している。企業としては、デジタル化のメリットばかりに目を奪われず、デメリットがもたらす社員の不安にも着目する必要がある。         

 


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