2022/12/11

リスキリングの取組内容

 「今、経営に関するキーワードで最もホットなものは?」というアンケートがあれば、DXとともに1・2位を争うのがリスキリングだろう。

 リスキリングとは、経産省の審議会で「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」(リクルートワークス研究所)と定義されている。

 たとえば、販売業務をしていた人がプログラミングの学習をしてIT企業に転職する、あるいはIT業務に就くというのが典型例で、急速な社会・経済のデジタル化への対応が背景にある。

 それでは、リスキリングに関し、企業はどのような取り組みをしているのだろうか。帝国データバンクが11月28日に発表した「リスキリングに関する企業の意識調査」結果を概観してみたい。

 まず、リスキリングについて、何らかの取り組みを 1 つ以上実施している企業は全体の48.1%、特に取り組んでいない企業は41.5%ということだ。

 これを規模別にみると、大企業58.1%、中小企業46.0%となっている。規模により結構な格差があるわけだが、それでも中小企業の半数近くが実施しているのは、思ったよりも高いと感じられる。では、その内容はどうかといえば、中小企業では次のようになっている(複数回答)。

①新しいデジタルツールの学習(45.8%)
②経営層による新しいスキルの学習、把握(41.4%)
③従業員のデジタルスキルの把握、可視化(32.1%)
④経営層から従業員に学習が必要なスキルを伝達(30.8%)
⑤eラーニング、オンライン学習サービスの活用(25.4%)
⑥DX、デジタル化に関連した資格取得の推奨、支援(20.8%)

 ①は、オンライン会議システム、データ分析ツールなどの学習ということだ。ズームでの会議の仕方を覚えればそれもリスキリングということになる。ラインワークスなどのチャットツールの活用もリスキリングに該当するだろう。②は、デジタルツールを含め、経営層が自ら学び実践する姿勢を示すことのようだ。⑤は手段の問題であり、eラーニングだからといってリスキリングになるかは不明だろう。

 上記の定義で言えば、ポイントは“大幅な変化への適応”と思うが、この中で本来の意味でのリスキリングに該当しそうなのは③と⑥くらいだろうか。

 このような流行りの言葉の宿命として、言葉だけが独り歩きし、いつの間にか本来の意味とはかけ離れてものに変容してしまうことがよくある。そして、その場合、多くはより安易な取り組みになる。

 たとえば、DXへの取組は、今や単なる情報化とイコールになってしまっており、FAXによる書類のやり取りを電子メールに替えたことをもってDXをうたう企業もある。また、某町役場では、総務省からDXを推進する職員の人数を尋ねられ、全職員の数を回答した。その理由は全員が行政専用ネットワークにつながるパソコンを使用していたからということである。もし、そのような根拠でよいのであれば、この国はDX人材が数千万人いる世界に冠たるDX強国となるわけだが、残念ながらまったく違うのは周知の通りである。

 話が逸れてしまったが、言いたいのはリスキリングも同様に単に従来の教育訓練と同一化してしまう懸念があるということだ。上記調査で、リスキリングが多様なとらえ方をされていることがうかがえた。このまま本当の意味を理解されずに、とりあえずデジタルに関して学んだり、操作方法を覚えたり、あるいはデジタルツールを使って学習したりすることがリスキリングであるとの認識が広がっていきそうである。       

 


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