2020/5/18

雇用調整助成金のコロナ特例措置

 雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を国が助成する制度である。

 4月から、新型コロナウィルスの影響を受ける企業を支援するため、4月1日~6月30日を緊急対応期間とし、助成率の拡大、各種要件の緩和などの特例措置を実施している。主な具体的内容は以下のとおりだ(カッコ内は通常→特例措置)。
 
①生産指標要件の緩和(1ヶ月10%以上低下→5%以上低下)
②雇用量要件の撤廃(一定程度増加は対象外→撤廃)
③クーリング期間の撤廃(1年→撤廃)
④対象労働者の拡大(雇用保険被保険者→被保険者以外も可)
⑤被保険者期間要件の撤廃(雇用期間6ヶ月未満対象外→撤廃)
⑥助成率の引き上げ(中小企業2/3→4/5、大企業)1/2→2/3、解雇等を行わない場合は 中小企業9/10、大企業3/4)
⑦教育訓練の加算額の増額(1,200円→中小企業2,400 円、大企業1,800 円)
⑧事業所設置後1年未満の事業所も対象
⑨自宅での教育訓練等、対象訓練内容の拡大
⑩計画届の事後提出可

 他に、風俗関連事業所、労働保険料滞納事業所、労働関係法令違反事業所も対象とするなど、思い切った内容となっている。

  さらに5月から、

①解雇等を行わず雇用を維持している中小企業の休業手当の94%を助成
②都道府県知事による休業等の要請を受けた中小企業で、解雇等を行わず雇用を維持し、100%の休業手当を支払っている企業の休業手当の100%を助成

  と特例措置の拡充がなされた。

  社員の給料が払えないと悲鳴を上げる中小企業も、休業手当を支給すれば、かなりの負担は回収できる。社員にとっても、とりあえず休業手当をもらえれば当座は何とかしのげるはずだ。

 にもかかわらず利用が少ないのは、そもそも助成金の存在が知られていない、手続きが面倒、申請の前提となる書類や規程が整っていない、などの原因がある。マスコミ報道等により存在自体はかなり浸透してきたものの、今度は行政の方で受け入れ体制が整っておらず、窓口がパンク状態となっていたり、支給までに時間がかかったりしているようだ。申請手続きの電子化はなされていない(※5月20日からオンライン申請が可能となりました)。

 5月14日には、安倍首相が現状の上限8,330円を15,000円と大幅に増額する方針を述べた。首相の発言であることから、ほどなく実現するだろう。

 ただ、感染拡大が収まりつつある中で、今さら休業手当支給を始める企業はあまりないと思われる。そうすると、すでに休業手当支給を実施している企業の事後申請が多くなるとみられる。もちろん、企業の体力を維持させるためにそれも必要だが、制度の周知や行政の申請対応を含め、3月くらいから何とかできなかったのかと思う。真っ先にしわ寄せが来る非正規社員の何割かは救済されたに違いない。    
 

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