2019/7/14

父親の育休制度は日本が1番?

 
 先月、自民党の有志議員が男性の育児休業取得の義務化を目指す議員連盟を立ち上げたとして話題になった。これには賛否両論あるが、男性の育休取得が心細い状況にあるのは確かだ。

 厚生労働省の雇用均等基本調査によれば、2018年度の男性の育児休業取得率は6.16%(女性は82.2%)となっている。2010年度はわずか1.38%だったことを思えば進歩は見られるものの、2020年度までに13%とする政府目標にはほど遠い。目標達成は絶望的である。

 取得期間も寂しい。平成27年度の同調査によると、5日未満が56.9%、2週間未満が74.7%で、ほとんど年次有給休暇で賄える範囲である。経営者や首長が自ら取得したことを自慢げに語るものの、期間は1週間程度とわかり、拍子抜けした方も多いのではないかと思う。とりあえず取得することが目的となっている企業もある。ホワイト企業の証としての「くるみん」の認定や、学生へのアピールのために数日取る(取らせる)のである。

 さて、このように男性の育休取得は非常に心もとない状況にあるが、実は日本の制度は先進国の中で最も優れているとの報告がある。ユニセフが6月13日に公表した「子育て支援策レポート」によると、「日本は、父親に認められている育児休業の期間が、41カ国中第1位(最も期間が長い国)」であるとのこと。ちなみに、第2位は韓国で、「米国は、本調査に含まれる国の中で唯一、母親・父親への有給育児休業に関する政策がない国」である。

 もっとも、「日本は父親に6カ月以上の(全額支給換算)有給育児休業期間を設けた制度を整備している唯一の国ですが、2017年に取得した父親は20人に1人にとどまっています」と、“名ばかり制度”である実態にも言及している。

 男性の取得率が低い理由としては、
①収入が減少する
②周囲を気遣って取りづらい
③人事評価や昇進・昇格に影響する(と思っている)
 等だろう。

 いずれも簡単に対処できる問題ではなく、①については、雇用保険による育児休業給付金の支給額アップは望めず(男性取得者だけアップさせるのはムリで、全員を対象にするのは財源の問題から難しい)、頼るとすれば企業からの補填(賃金支給)ということになる。後者の2つについては、企業による啓蒙や説明によって、対象者の懸念を払しょくすることだろうか。
 企業がその気になればできないことはないが、「働き方改革」への対応をはじめ、様々な課題を抱える現状において、一般的には、優先順位は低いといわざるを得ない。

 今後、父親が育休を取ることへの社会的な理解は進むだろうから、取得率は徐々に上がっていくと思うが、取得期間の増加はまだまだ難しそうだ。積水ハウスが男性の育休者は1ヶ月以上とする制度を設けたように、個別企業の善意に頼るしかないのが現状といえる。“めぐまれた制度”を活かせるのはかなり先のことになりそうである。
 

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