2019/4/14

同一労働同一賃金マニュアル

 
 働き方改革の目玉の1つ「同一労働同一賃金」は、企業の労務管理担当者からすると、何をすればよいか今一つわかりづらい。人材サービスのアデコ社の調査によると、2020年4月(中小企業は2021年4月)施行にもかかわらず、大企業の7割以上が同一労働同一賃金導入への対応方針が固まっていないという。大企業でさえこの様子なのだから、中小企業では「よくわからないから放っておくか」と半ば開き直っている担当者も多いのではないだろうか。

 行政もそういった空気は感じ取っているようだ。今般、厚生労働省から同一労働同一賃金に対応するためのマニュアル、「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」というのがHPで公開された。同一労働同一賃金については、同省からさまざまな資料が出ているが、その決定版といえるものだ。

 注目すべきは、パートタマーや契約社員の割合が高い7業種(スーパーマーケット、食品製造、印刷、自動車部品製造、生活衛生、福祉、労働者派遣)の業界別マニュアルを作成している点だ。内容は具体例の違いだけでほぼ同じなのだが、該当業界の担当者には、やはりうれしいだろう。これら以外に、どの業界でも利用可能なよう「業界共通編」もある。いずれも90ページにわたるボリュームだが、本文は60ページ弱で図表も多く、適宜コラムなども配置されていて、割とサッと読むことができる。

 主な内容は以下の3章で、これにワークシートや各業界の実態調査結果等の資料が付属している。

第1章 パートタイム・有期雇用労働法の解説
第2章 不合理な待遇差を点検・検討する枠組み、留意点
第3章 具体的な点検・検討手順

 第1章は、実務と言うよりはベースとなるパートタイム・有期雇用労働法の解説である。「3.不合理な待遇差の解消の考え方」という項目の「均等待遇」と「均衡待遇」の違いを解説した部分が参考となる。まず、両者の違いを把握することが出発点となるからだ。
 また、総合職、一般職、フルタイム無期雇用労働者などが混在している場合の考え方も実務的なポイントを押さえている。「4.待遇差の説明義務のポイント」で示している説明書のモデルは利用価値が高そうだ。

 第2章は、不合理な待遇差でないか判断する際の枠組みを示した上で、誰と比較するのか、何を比較するのか、について解説している。
 また、待遇差解消の際の留意事項と不合理な待遇差でないかを点検・検討する手順の全体の流れについて、4段階に分けて簡単に解説している。ちなみに4段階とは以下のものである。

①職員タイプ等の現状・「均等待遇」、「均衡待遇」の対象となる労働者を確認する
②職員タイプごとに待遇の現状を整理し、待遇の違いを確認する
③待遇の「違い」が不合理か否かを点検・検討する
④是正策を検討する

 これを受けた第3章で、4段階の詳細を解説している。本マニュアルの中核となる章だ。記入例を示したワークシートがあるので、これに沿って整理をしていけば、ある程度の対応が可能となるだろう。第1章と第2章は飛ばし読みでも構わないが、この章だけはしっかりと読み進めたい。

 もちろん、行政がつくったマニュアルなので、具体性では物足りない部分もある。実際には事例のようにうまく割り切れないグレーなケースも多いだろう。ただ、法律だけでは難解かつ複雑な対応の仕方をわかりやすく整理している点で、マニュアルとして十分な価値はあると思う。ということで同一労働同一賃金への対応の際には、一読をお勧めしたい資料である。
 

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