2021/1/17

コロナによる就職内定率への影響

 1月16日の日経新聞朝刊に、今春の大卒内定率が昨年12月1日時点で82.2%となり、前年比で4.9ポイント減少しているとの記事があった。言うまでもなく、新型コロナウィルスの感染拡大による業績低迷が主な要因と考えられる。

 ところが、高卒の内定率は昨年11月末時点で80.4%と前年比3.2ポイント増加しているとのことだ。普通に考えれば、高卒の内定率も低下しそうだが、そうなっていない。特に、コロナの影響を甚大に受けている飲食や宿泊業などは高卒者の割合が大きい。なぜ、高卒の内定率は高まっているのだろうか。

 その理由として、労働政策・研修研究機構副統括研究員の堀有喜衣氏は、次の可能性を指摘している。

①昨年度までの人手不足の影響が持ち越され、不況下でも採用したいという企業の意向が強いこと
②今年度の就職希望者の減少が著しいことから、就職から進学に切り替えたこと
③高卒求人は過去の不況時とは異なりすでに出そろってしまっており、需要の先食いをしてしまっていること
④入職経路において、職安・学校経由ではなく、その他(自己開拓)が増えたこと

 少し説明を加えると、③は、近年はハローワークの働きかけのより、求人の募集が早くなっているとのことである。④は、自己開拓の場合は調査データから外れてしまうということだ。

 ①については、大卒にも当てはまると思うので、②~④が高卒の内定率向上に大きなアドバンテージを与えたと考えられる(②は、大卒にもあるかもしれないが、一部の理系の学生に限られ、人数は少ないだろう)。言葉を換えると、②~④のメリットを享受できず、頼るものが①しかない大卒者は、コロナの影響に勝てなかったということだ。

 このように大卒の就職戦線は、昨年までとは打って変わって買手市場となった。コロナ禍に喘ぐ企業には申し訳ないが、影響の少ない企業にとっては優秀な人材を得るチャンスである。特に近年、人材の争奪戦で不利な戦いを強いられている中小企業には、千載一遇の機会といえる。これと思った人材がいるのなら、当初の予定人数を多少上回ったとしても、採用を考えてみてはいかがだろうか。     
 

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