人事制度構築の事例 初めての企業向け評価制度



重本コンサルティングオフィス
人事に関する制度設計、労務管理の実務やトラブル対応へのアドバイス、各種セミナーなどを通じて、
社員のヤル気を高める職場づくりを実現します。

〒152-0001 東京都目黒区中央町2-1-3-401
TEL:03-3793-2507 FAX:03-3793-2507
 
  初めての企業向け評価制度

 初めての企業向け評価制度というのは、初めて評価制度を導入する企業や、ずっと以前に導入したけれど機能せず、評価制度が形骸化しているところにあらためて導入しようとする企業に適しているという意味です。要は、一般的な評価制度に比べて、不慣れな人でも評価しやすく、評価エラーが少なくて済むということです。また、評価者研修をみっちりとやって、評価の仕方を説明したり、ブレが出ないように評価者のレベル合わせをしたりということも、それほどありませんので、人事制度ばかりにヒト・カネをかけられない中小企業に適しているといえます。

 特徴は次の2つです。

① 評価項目はできるだけ具体的な行動を示すこと
 評価項目の記述が多少抽象的であっても、ある程度評価に慣れた人であれば、それを適切に解釈し、部下の具体的な行動に当てはめることができるのですが、不慣れな人だと、的はずれな解釈をしたり、日常の職務行動に結びつけられなかったりします。そこで、誰が読んでも、その行動が頭に浮かぶような具体的な記述をするわけです。

② その行動レベルを優劣度で判定するのではなく、その行動がどれだけ見られたかという頻度で判定すること
 部下の行動が5段階のどのレベルにあるのかという優劣度の判定も、慣れた人なら、大体の落としどころが直感的にわかるのですが、不慣れな人は、自分を基準に考えてしまったり、基準が日によって大きく違ったりして、レベルがバラバラになりがちです。これを防ぐには、評価項目ごとに優劣度レベルの記述をすることが必要となり、正直なところ結構な負担が生じます。そこで、本制度では、レベル判定を評価項目に記述した行動がよく見られたかどうかで行います。

 以上の特徴により、この制度は、最初の評価項目作成にやや時間がかかりますが、運用は比較的ラクに行うことができます。また、その特性により、定型的業務が中心となる一般社員向けの評価には特に強みを発揮します。
 
 それでは、具体的な中身を見ていきましょう。次の事例は、あるレンタルサービス業で作成した能力評価シートの抜粋です。職種はフロント係(レンタルサービスの窓口となる部署)で、職位は一般社員です。

評価項目

チェック項目

評価

得点

○ △ ×

事務処理

●出入庫のパソコン入力と、伝票作成を適切に行っている

2 1 0

     
●簡単な見積書の作成を的確に行っている

2 1 0

●小口現金管理を適正に行っている

2 1 0

●帳票類をきちんと整理している

2 1 0

●事務の効率化に取り組んでいる

2 1 0

機械・
安全管理

●正確な出入庫点検とその後の作業指示(社内か外注かの判断)を確実に行っている

2 1 0

     
●帰着点検を確実に行い、点検札を取り付け記入している

2 1 0

●在庫機械を把握し、代替品の選定を適切に行っている

2 1 0

●事務所の整理、整頓、清掃を日々実践し、来店客に好感を持たれるようにしている

2 1 0

●5S運動に自主的・積極的に取り組んでいる2 1 0

 ※評価 ○・・・よく見られる、△・・・ときどき見られる、×・・・あまり見られない

 サンプルをご覧になってわかるとおり、評価項目(チェック項目)を日常業務に即して具体的な記述をすること、チェックリスト形式で判定を簡素化していることが特徴です。当初は、優劣度をS~Aの5段階で評価することを考えていたのですが、評価に慣れてないことからなるべく簡単にできるものがよいとのクライアントとの意向により、このようなチェックリスト形式とした次第です。チェックリストといっても、○か×の2つだけだと、両極端すぎて逆に評価が難しくなることから、△を設けて3段階にしています。○△×は判定が下しやすいよう、当該行動の頻度を基準にしています。
 事例の企業では、このような形で職位・職種に応じて10個ほどの評価項目を設定しています。

 本制度にも、もちろん短所はあります。デメリットとして次の5つをあげておきます。

① 評価項目となる行動を選定・作成するのに手間がかかる
 当該職務でキーとなる業務行動を具体的に記述することが求められますので、その選定や作成に注力が必要です。業務の中身や方法が変わった場合など、メンテナンスの手間もかかります。ただ、これは適正な評価をするためには不可欠な作業ととらえ、ここで手抜きをしてしまっては元も子もないという認識も必要と思われます。

② 評価項目以外の行動がおろそかになるおそれがある
 具体的な行動を選定することの裏返しとして、評価項目・チェック項目から漏れる業務行動が出てきます。重要度は低いとはいえ、評価対象から外れたこれらの行動がおろそかになってしまう可能性があります。これについては、「主体性」「積極性」「協調性」といった態度評価でカバーをすることが考えられます。ただ、これらの態度評価はある程度抽象的な記述をせざるを得ませんので、制度の特長が薄れてくることにもなり、そのバランスには注意が必要です。

③ できて当たり前のことが多くなり、評価が高くなりがちで、差があまりつかない
 チェック項目は「やるべきことorやらなければならないこと」を列挙するため、できて当然の行動が多くなります。そうすると、どうしても平均点は高くなってしまいがちです。そのため、総合的な評価をどのように判定するかが課題となります。得点でS~Aの総合評価を決めるのであれば、基準を高めに設定するなどの対応が必要です。

④ よりレベルの高い行動を引き出すのに工夫がいる

⑤ 被評価者がどれくらいのレベルにあるのかが不明で、能力開発との連動が課題となる
 ④⑤については、管理者の部下への適切な指導が必要となり、その実現のために部下育成の仕方をトレーニングするなどの別途対応が求められます。ただ、一方で、本制度は部下が取るべき具体的な行動を示していることから、何をすべきかが明確なので、能力開発しやすいともいえます。

 ともあれ、評価制度の導入にあたっては、まずは社員に理解され納得性のある評価が得られるよう制度づくりをする必要があります。最先端で格好のよい評価制度を導入しても現場で運用できなければ意味がありません。いや、使えない評価制度は不信や不安の基となり組織にマイナスの影響を及ぼすといってもよいでしょう。

 評価制度の必要性は感じているが評価は難しいと考えている会社、導入した制度が使いこなせずに役に立っていないと考えている会社にお勧めしたい制度です。