人事制度構築の事例 ポイント制退職金



重本コンサルティングオフィス
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  ポイント制退職金
 

 ここではポイント制退職金の説明をします。退職金制度については、新たに導入するよりも、今あるものを変えるというニーズの方が高いと思いますので、それを前提に話を進めていきます。もちろん、新規導入でも基本的な内容・進め方は同じですので、設計のイメージはできると思います。

 ポイント制退職金とは

 ポイント制退職金制度とは、資格等級や勤続年数などに応じてポイントを定め、その累積ポイントに一定の単価を乗じることで、退職金支給額を算出する方式です。

●ポイント制退職金の一例
 退職金支給額=(累積等級ポイント+累積勤続年数ポイント)×単価×退職事由別係数


 ポイント制退職金導入の必要性

 

 現状の退職金制度で最も多いの基本給連動方式で、「退職時基本給月額×勤続年数に応じて定められた支給率」によって決定されるのが典型例です。これには、次の4つの問題点があります。

① 年功的賃金による退職金額の高騰
 年功的な運用により基本給は年々高くなることが多いので、結果的に退職金額が高くなりがちです。
② 中途採用者に不利
 勤続年数に応じて定められた支給率は長期勤続するほど有利となりますので、逆に中途採用者には不利となります。
③ 退職時の処遇に大きく左右されることの不合理

勤続を通じて非常に貢献度の高かった社員でも、何らかの事情で退職時の基本給が低ければ、貢献度に見合った金額が支給されないケースも出てきます。逆もまた然りで、勤続を通じて会社にどれだけ貢献したかがはっきりと反映されません。
④ 近年の人事制度の流れと不整合
 年功的な人事制度から能力・成果主義の人事制度へと転換が進む中で、退職金制度を年功的のままにしておくのは整合性に欠けます。


 このような現行制度の問題点を克服するものとして、ポイント制退職金は最適といえます。上記の問題点をカバーする以外にも、ポイント制退職金には次のようなメリットがあります。

① 基本給と切り離して退職金の算出ができるため、給与制度変更に伴う退職金の制度変更が避けられる。

② 貢献度に応じた年間の退職金額が明確になるため、業績向上や昇格へのモチベーションを高められる。

③ ポイント要素や単価の変更により、経済情勢や会社政策に応じた制度設計が可能となる。

 

 ポイント制退職金の採用実態

 ポイント制退職金の採用実態は、下記のように、
1,000人以上の大企業では半分を超えています。また、規模が大きくなるにつれて、退職時基本給からポイント制への移行が進んでいることがうかがえます。

 

企業規模/方式

ポイント制

退職時基本給

1,000人以上

51.3

25.2

300999

39.6

36.7

100299

24.9

50.9

■平成25年度就労条件総合調査(厚生労働省)

 導入にあたっての基本コンセプト


 退職金には、「功労報奨」と「生活保障」という2つの性格があります。これを踏まえ、当オフィスでは、次の4つのコンセプトに基づいて制度設計を行うことを基本にしています。これを軸に、各企業の現状やニーズに応じたコンセプトを設定します。

① より大きな貢献をすることが退職金の充実にもつながることを意識できる制度とする。

② 不利益変更とならないよう、現行水準をベースに設計する。

③ 高額の支払いリスクが発生しないようするため、また、モラールの低下を防ぐため、社員間の格差が極端に生じないようにする。

④ 運用しやすく、社員にも理解しやすいシンプルな制度とする。

 
制度設計のステップ

 制度設計は、1.現行退職金の分析⇒2.制度の基本設計⇒3.新退職金制度の検証⇒4.新制度移行というステップとなります。主な作業内容は次の通りです。

1.現行退職金の分析
①現行制度の確認
 現行の退職金がどのような制度内容かを退職金規程等で確認をします。企業年金を導入しているのであれば、その規約も確認します。
②現行水準の確認
 現行の支給水準をモデル退職金で確認をします。モデル退職金がなければ作成する必要があります。モデルにより、同業・同規模の他社との比較をします。
③現行制度での
退職金支給額の算定
 移行に備えて、全社員について、新制度を導入する直前時点における退職金支給額を算定します。

2.制度の基本設計
①新モデル退職金の設定
 支給水準の目安をつけるため、新制度のモデル退職金を設定します。大卒、高卒の標準モデルだけでなく、順調に昇格した(=高評価を受けた)場合やそうでない(=低評価を受けた)場合など、いくつかのパターンを準備しておくとよいです。
ポイントの設定
 勤続年数、等級、役職、評価等、ポイントの要素やウェイトを
検討し、モデル退職金を踏まえてポイントを設定します。

③単価の決定
 ポイント単価を決定します。
 一般的に1万円とすることが多いです。
④退職事由別係数の決定
 自己都合退職の場合に、支給額を減額するための係数を設定します。通常は現行制度と同じものを用います。

3.新退職金制度の検証

①シミュレーションモデルの作成
 新退職金制度で評価・昇格等のパターンに応じたいくつかのモデルを作成します。
②シミュレーションモデルの評価
 このモデルを2①の新モデル退職金や現行モデル退職金と比較し、必要に応じて制度の修正をします。

4.新制度移行

①新制度移行方法の検討
 社員への通知の仕方、移行の仕方を検討します。
②移行ポイントの計算と設定
 1③にて算定した退職金額を基に、新制度スタート時点の各社員の保有ポイントを計算します。
③退職金規程の見直し

 新制度に即して退職金規程を改訂します。
④社員説明

 新退職金制度の内容を全社員に向けて説明します。

 ポイントの設定方法

 上記ステップの中で核となるのは2②「ポイントの設定」ですので、これを詳しく説明します。ここでの具体的な検討内容は、ポイント要素の検討、要素間ウェイトの検討、ポイント配分の検討の3つです。

1.ポイント要素の検討

 まず、ポイント要素の検討ですが、ポイント要素は大きく属人要素(年齢・勤続年数)と職務要素(等級・役職・評価等)に分けられます。また、1つの要素か、複数の要素を組み合わせるかによって、単一要素と複合要素に分けられます、これを類型化すると次のようになります。

要素の分類

単一要素

複合要素

属人要素

属人単一型
例:年齢
属人複合型
例:年齢+勤続年数

職務要素

職務単一型
例:等級
職務複合型
例:等級+役職

属人・職務要素

類型なし属人・職務複合型
例:年齢+等級


 この5つの選択肢(属人・職務要素単一型は成立しない)から選ぶことになるわけですが、在職中の貢献度を反映させるというポイント制退職金の主旨から、職務単一型、職務複合型、属人・職務複合型の3択となります。さらに現実的には、既存制度からの移行を考えると、将来の退職金額をあまりに変化させることは難しいため、属人要素の設定が必要となることから、属人・職務複合型がもっとも適用しやすいといえます。なお、新規に退職金制度を設けようとする企業や、業績等の事情で年功要素の排除が必要となり、社員の合意が得られる企業であれば、職務単一型や職務複合型でも可能と思います。

 次に属人要素の中身ですが、年齢よりも勤続年数とするほうが、現行制度からの継続性という意味でも、また貢献度の反映という意味でも合理性は高いでしょう。
 職務要素の中身は、まず、等級は第一に考えられるべきです。もちろん、等級制度がきちんと確立・運用されていることが前提です。そして、等級だけでは貢献度を明確に反映できない場合や社員間の差があまりつかない場合などは、役職、評価結果、等級内にグレードがあるのなら当該グレードなどをポイント化して設定することも考えられます。ただ、あまり細かな要素を設定すると制度が複雑化し、運用しづらくなりますので、そのバランスにも留意しなければなりません。

2.要素間ウェイトの検討

 要素間のウェイトの配分は、常に一定とするか、勤続年数等に応じて変化させるかによって、固定型と変動型に分けることができます。

〔固定型の例〕

パターン

ウェイト(%)

属人要素

職務要素

50

50

40

60

30

70

20

80


 一般的な特徴としては、A⇒Dに行くにつれて、社員間の格差が大きくなり、等級の高い社員には有利で、低い社員には不利となります。また、現行制度が年功的ならば、移行後の変化が大きいため、合わせづらくなります。

〔変動型の例〕(パターンE)

勤続年数

ウェイト(%)

属人要素

職務要素

3~9

50

50

10~19

40

60

20~29

30

70

30~

20

80


 特徴としては、固定型のパターンDと同様です。つまり、貢献度によって金額が大きく変動する制度となります。


 どのパターンを選択するかは、ここで大まかに決めてもよいし、次項のポイント配分を行い、シミュレーションをしてみてから決めてもよいです。

3.ポイント配分の検討

 設定したモデル退職金を目安にして、各パターンに応じてポイント配分をしていきます。勤続年数ポイントは、1年刻みで設定することも考えられますが、運用しやすさを考慮し、一定年数ごと(たとえば5年ごと)に区分して設定するほうがよいでしょう。

〔パターンACEを選択した場合のポイント配分の例〕(単価:1万円)

ポイント要素

パターン

勤続年数
ポイント

1~5年

4

2

4

6~9年

8

5

7

10~14年

12

7

8

15~19年

15

9

12

(以下略)

・・・

・・・

・・・

職務ポイント

1等級

3

4

3

2等級

7

9

7

3等級

15

20

19

4等級

21

27

27

(以下略)

・・・

・・・

・・・

 
 これを基にシミュレーションを行い、望ましいパターンを選択していきます。
 当初に設定したモデル通りにはなかなかいかないものですが、導入にあたってのコンセプトを踏まえて、経営判断を下すことになります。