人事制度構築の事例 コンピテンシーによる能力開発



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 コンピテンシーによる能力開発

 ここでは、コンピテンシー評価をどうやって社員の能力開発に結びつけていくかを解説します。「評価制度の構築」のところでも述べたように、人事評価の主目的は能力開発にあります。評価により社員が育ってこそ、その意味があるということです。
 評価要素の中でも、コンピテンシーは能力開発のために非常に有効です。それは、コンピテンシーが行動に着目しているからであり、具体的な行動の実践や是正ならば、本人が意識をすれば必ず改善や向上が期待できるからです。ただ、社員に対して、漠然と評価を能力開発に活用してくださいと言っても、実際に適切に活用してもらえるかはわかりません。それこそ、上司の熱意や部下育成力、本人の向上心や自己啓発意欲に左右されることでしょう。そこで、ここでは、システムとして社員の能力を高めていく手法を説明していきます。ツールとしては行動目標管理というものを用います。

 行動目標管理のステップ 

 まず、行動目標管理のステップですが、次の7つで進めていきます。なお、開発期間は評価期間に合わせるのが適切です。ここでは1年とします。
 
① 重点目標の提示
② (当該重点目標についての)現状・課題の整理
③ 具体的行動の設定
④ 中間評価
⑤ 現状・課題の整理
⑥ 最終(期末)評価および総合評価
⑦ 次期課題の検討

 この流れからもわかるように、行動目標管理の進め方は、業績目標管理と基本的に同じです。期初に上司と部下とで、期中に伸長させたいコンピテンシーを抽出し、目標となるような具体的行動を設定し、中間点・期末にその遂行度合いを双方でチェックするというものです。よって、業績目標管理を導入している企業であれば、行動目標管理の進行を業績目標管理のスケジュールと重ね合わせることも可能です。
 それでは、各項目を詳しく見ていきましょう。 

① 重点目標の提示
 まずは、強化するコンピテンシー項目を選び出すステップです。前年度の評価を踏まえ、社員が役割を果たしていく上でネックとなっているものや、さらに向上させることで目に見えて業績の向上が期待できる
ようなもの(たとえば業績目標の達成に求められるもの)を設定します。特に、優位性のある人材を育てるために、後者の強みを伸ばすという視点は大事にしたいです。得意なものの強化は、行動目標管理にあたって社員のヤル気を引き出すことにもなります。個数は2~3というところでしょう。
 重点項目に加えて、どのレベルを目指すのかも検討します。評価CならBレベルに、評価BならAレベルを目指すといったことです。なお、ここで設定したコンピテンシー以外はほったらかしにするということでは決してありません。他のコンピテンシーについても必要に応じて能力開発をしていきます。行動目標管理において、特に重点的に強化したいものを取り上げ、ケアをしていくということです。

② 現状・課題の整理

 続いて②は、目標とするレベルに向けて、何が不足し、何が求められるかを整理するステップです。通常、コンピテンシー評価には具体的な行動例が示されていると思うので、それらの中のどの行動が特に足りなかったのかを検討すればよいでしょう。もちろん、それ以外の行動でもかまいません。上のレベルの評価に至らなかったのはなぜかを明確化するということです。
 その際に大切なのは、単にこのような行動が見られなかったという現象的なことだけでなく、なぜ見られなかったのかを追究することです。たとえば、ある社員はプレゼンテーションがうまくありません。その要因を突きとめると、場慣れしていないことが考えられました。背景にあるのは、プレゼンの機会があっても、失敗を恐れてしり込みをしてしまうというチャレンジ精神の不足です。課題として浮かび上がるのは、とにかくプレゼンの場を積極的に増やすということになります。

③ 具体的行動の設定

 ③は、②の課題に基づいて具体的な行動内容を設定するステップです。こうすれば期待するレベルのコンピテンシーを発揮している(ひいては成果を上げられる)と見られる行動を設定します。実際の行動を引き出せるよう、具体的なイメージが浮かぶ内容にすることです。先ほどの事例でいえば、「今期の○○と△△のプレゼンを担当する」「ミーティングでの商品説明を積極的に引き受ける」といったことです。成果を確実なものにするため、なるべく複数の行動を挙げたいです。コンピテンシーによる能力開発の一番のポイントとなるところですので、ぜひ、本人と上司双方で知恵を絞ってください。上司の側から、「プレゼンの機会を増やすようにするので、その際は積極的に手を挙げてほしい」などと支援事項を提示するのも、一体感を高め、目標達成に向けてのモチベーションを向上させるうえで効果的です。

④ 中間評価
 中間時点での目標達成度合いの振り返りです。設定した行動が見られたかどうかを評価します。評価の仕方は人事評価と同じものを用いても結構ですが、もっと簡単に○△×の3段階でもよいと思います。

⑤ 現状・課題の整理

 ④を踏まえて、問題点・課題を再度整理します。併せて、当初設定した具体的行動の再検討も行います。これまでの実践の様子から、もっと適切な行動があれば設定を変更することも考えられます。

⑥ 最終(期末)評価および総合評価
 最終的に目標が達成できたかどうかの評価です。具体的行動ごとに評価したうえで、当該コンピテンシーに対する総合評価を判定します。総合評価は人事評価と一致することが原則です。

⑦ 次期課題の検討
 ⑥を踏まえて今後の課題を整理するステップです。特に重要な課題があれば、次期行動目標管理の重点目標として引き継がれることになります。

 以上が各ステップの解説になりますが、これらの項目を的確に遂行していために重要となるのは本人と上司との日常的なコミュニケーションです
。進捗状況に関心を持つことの必要性は業績目標管理よりも高いといえます。社員のレベルにもよりますが、ある程度遂行の仕方を任せておいても構わない業績目標管理に比べて、行動目標管理は日々の職務行動の様子を意識的に観察する必要があるからです。

 行動目標管理シート

 最後に、上記を実践していくためのツールとして、行動目標管理シートを営業社員の具体例で説明します。これは、次のような構成となっており、上記のステップがそのまま落とし込まれているのがわかるかと思います。

重点
コンピテンシー

現状・課題

具体的行動

計画化

行き当たばったりの傾向が強い。計画立てて営業活動を進めることと、反省点を次に活かすことが求められる。まず、計画意識を高めることが大前提である。



前期評価:C
目標評価:A

1

毎朝、1日にやるべきことをチェックリスト化する。

2

売上計画とのズレが出そうなときは、早目に要因をつかみ、対応策を考え、上司に報告する。

3

商談ごとにうまくいった点とうまくいかなかった点を、その原因とともに整理する。

4

どの点を押さえれば成功なのかを商談前に検討する。

中間評価

コメント

1

自己

励行はしているが大差のない内容となっていることが多い。

上司

内容にもう少しメリハリがあるとよい。

2

自己

×

要因・対応策の検討ともに中途半端。

上司

×

日々の営業に追われている感じで改善に至っていない。

3

自己

×

余裕があればやっているが、整理が追いつかないのが現状。

上司

ポイントは押さえている。さらに深めることで有効化できる。

4

自己

努力はしているが成功状態をつかむのがなかなか困難。

上司

以前に比べれば格段の進歩。成功イメージをさらに明確に。

期末評価

コメント・次期課題

総合評価

1

自己

引き続き励行はしたものの惰性化した面がある。

自己

上司

これだけはやるという重点テーマを設けたい。

上司

2

自己

不完全ではあるが、要因分析と対応策が検討できた。

上司

ずいぶん改善した。内容の掘り下げを期待する。

3

自己

ポイントをつかむことを心がけ、活用も結構できた。

上司

整理のコツをある程度つかめたと思う。特に失敗をこらからの財産にしてほしい。

4

自己

成功状態をある程度つかめるようになった。

上司

成功イメージを具体的に描けるようになった。