労働時間に関するQ&A

労働時間

Q.健康診断の受診時間は労働時間となりますか?
 通達では、「一般健康診断の受診のために要する時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、有害業務従事者に対するいわゆる特殊健康診断については労働時間と解される(昭和47.9.18基発602号)」と示されています。
 したがって、一般健康診断(雇入時・定期の健康診断、特定業務従事者・海外派遣労働者の健康診断)は、必ずしも労働時間とならない場合もありますが、特殊健康診断は労働時間となるといえます。
(2012.7.23)

Q.法定労働時間の算定にあたって、1週間とは、何曜日から何曜日までを指すのですか?
 就業規則等に定めがあればそれによることになります。定めがなければ、暦日の週、つまり日曜日から土曜日までを指します。
(2012.7.23)

Q.役員運転手について、断続的労働として労働時間の適用除外の許可を受けていますが、勤務内容に変更があるときは、あらためて許可を得ないといけないのでしょうか?
 通達では次のように示されています(昭和23.9.20基収2320号)。「宿直または日直勤務、監視または断続的労働に従事する者に対する許可等については、許可後に申請事項の変更があった場合には、原則として許可の再申請を要するが、総合的に判断して労働の態様が労働者にとり有利に変更したと認められる場合は、勤務内容に相当の変化がない限り許可を受けさせる必要はない」 
 つまり、原則として再申請ですが、労働者に有利の変更と考えられる場合は、大きな変更がない限り、その必要はないという理解でよいと思います。
(2012.7.23)

 1ヶ月単位の変形労働時間制

Q.1ヶ月以内の変形労働時間制を採用していますが、時間外労働はどのように計算すればよいのでしょうか?
 これについては、次の通達が示されています(昭和63.1.1基発1号)。
(1)1日については、就業規則その他これに準ずるものにより8時間を超える時間を定めた日はその時間を、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
(2)1週間については、就業規則その他これに準ずるものにより40時間を超える時間を定めた週はその週の所定労働時間を、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間((1)で時間外労働となる時間を除く)
(3)変形期間については、変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間((1)(2)で時間外労働となる時間を除く
 このように、(1)(2)(3)の3段階でチェックすることとなります。1日単位や1週間単位でみると時間外労働にはなりませんが、変形期間単位でみると時間外労働になる場合がありますので注意が必要です。
 なお、1年単位の変形労働時間制の場合も同様の考え方をします。

(2012.7.23)

Q.変形労働時間制を採用しているとき、1日8時間超の労働日を休日と振り替えた場合、振り替えた労働日(=休日であった日)にそのまま8時間超の労働をさせることはできるのでしょうか?
 できません。変形労働時間制により、1日8時間を超える所定労働時間を定めた日と休日が振り替えられた場合、振替によって1日8時間を超えて労働する部分は変形労働時間制としての扱いは認められず、時間外労働として割増賃金の支払いが必要になります(昭和63.3.14基発150号)。
(2012.7.23)

Q.労基法第32条の2では、1ヶ月単位の変形労働時間は、「労使協定により、または就業規則その他これに準ずるものにより」と定められていますが、「その他これに準ずるもの」とはどういうものでしょうか?
 これは、就業規則の作成義務のない事業場(労働者が常時10人未満の事業場)において作成される就業規則に準ずる規定のことです。この規定を作成した場合には、労働者に周知する義務があります(労規則第12条)。
(2012.7.23)

1年単位の変形労働時間制


Q.当社では1年単位の変形労働時間制を採用しており、対象期間について労働日と労働時間を明示しています。今般、スケジュール変更の必要性が生じ、当初休日としていたある週の土曜日を出勤日とし、出勤日としていた別の週の土曜日を休日にしたいと考えているのですが、このようなスケジュール変更は可能なのでしょうか?
 「労働日及び労働日ごとの労働時間を具体的に定めることを要し、業務の都合によって任意に変更するような制度はこれに該当しない」(平6,1.4基発第1号)とあり、スケジュール変更はできません。
 
ただし、休日振替ならば可能です。厚生労働省が示した「東日本大震災に伴う労働基準法等に関するQ&A」の中で、その要件について以下のように述べています。
 「
1年単位の変形労働時間制を採用した場合において、労働日を特定した時点では予期しなかった事情が生じ、やむを得ず休日の振替を行わなければならなくなることも考えられます。そのような場合の休日の振替は、以下のとおりとしていただくことが必要です。
○ 就業規則に、休日を振り替えることができる旨の規定を設け、休日の振替の前にあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えるものであること。
○ 対象期間のうち、特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間として労使協定で定める期間をいう。)以外の期間においては、連続労働日数が6日以内となること。
○ 特定期間においては1週間に1日の休日が確保できる範囲内であること。」
(2012.7.23)

Q.1年単位の変形労働時間制を採用する事業場で、労働者が退職したり、途中で入ったりした場合の労働時間・割増賃金の取り扱いはどうなるのでしょうか?
 労働した期間が対象期間より短い労働者は、労働させた期間を平均して1週間あたり40時間を超えた時間について、割増賃金支払による賃金の清算が必要となります。
 具体的には、変形期間の実労働時間から、法37条に基づいて割増賃金を支払った時間と、
40×実労働期間の歴日数÷7を減じて得た時間について、割増賃金支払が必要となります。この清算は、退職者等の場合は退職等の時点で、途中に入った者は対象期間終了時点で行う必要があります。
(2012.7.23)

 フレックスタイム制

Q.フレックスタイム制で、始業時間は会社が定めた時間で終業時間のみ労働者の決定に委ねるというのは認められるのでしょうか?
 「労基法32条の3では、「始業および終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者」についてフレックスタイム制を認めることとしていますので、どちらか一方のみのフレキシブルタイムは認められないと解されます。通達でも、「始業及び終業の時刻の両方を労働者の決定にゆだねる必要があり、始業時刻又は終業時刻の一方についてのみ労働者の決定にゆだねるのでは足りないものであること」と示されています(昭和63.1.1基発1号)。
(2013.5.27)

Q.フレックスタイム制を、ある部署の特定個人だけを対象に適用してもかまいませんか?
 フレックスタイムの対象となる労働者の範囲については労使協定で定めることになります。労使協定を適正に締結すれば、対象者は部署全体でも特定個人でも結構です。
(2013.5.27)

Q.清算期間を1週間としてもよいのでしょうか?
 清算期間は1ヵ月以内とされていますので、1週間でもかまいません。下限は特に定められていませんが、清算期間を1日とするのは1日の労働時間を固定することになって、フレックスタイム制の趣旨を損ないますので、実質的に2日以上になると考えられます。
(2013.5.27)

Q.清算期間における法定労働時間の総枠はどのようにして算出するのでしょうか?
 「40時間×清算期間の日数÷7」で算出します。清算期間における総労働時間は、この総枠の範囲内で設定する必要があります。
(2013.5.27)

Q.コアタイムは必ず設定しなければならないのでしょうか?
 法的には必ずしも設定する必要はありません。ただし、コアタイムがなければ、出社しなかった場合の取扱いをどうするかなどのややこしい問題も生じますので、労務管理のうえからも設定するのが基本といえます。
(2013.5.27)

Q.コアタイムは何時間でもよいのでしょうか?
 コアタイムの上限・下限について特に規定はありませんが、通達では、フレックスタイムが極端に短く、コアタイムと1日の労働時間がほぼ一致するような場合は、フレックスタイム制の趣旨に合致しないとしています(昭和63.1.1基発1号)。したがって、フレックスタイムが始業・終業ともに少なくとも1時間以上となるよう、コアタイムを設定したいです。
(2013.5.27)

Q.フレックスタイム制を適用している社員が年次有給休暇を取得した場合、その取得日には何時間労働したと考えればよいのでしょうか?
 標準となる1日の労働時間労働したものとして取り扱います。標準となる1日の労働時間は、フレックスタイム制を採用する場合に労使協定により定める事項の1つです。
(2013.5.27)

Q.当社では派遣社員を受け入れていますが、派遣社員にフレックスタイム制を適用できますか?
 派遣先で派遣労働者にフレックスタイム制を適用するには、
①派遣元事業場の就業規則等で、派遣先の就業規則等により、始業及び終業の時刻を派遣労働者の決定にゆだねることを定めること
②派遣元事業場において労使協定を締結し、所要の事項について協定すること
③労働者派遣契約において当該労働者をフレックスタイム制の下で労働させることを定めること 
 が必要です(昭和63.1.1基発1号)。①②は派遣元にて対応することですので、その確認が必要となります。
(2013.5.27)

Q.フレックスタイム制でも、時間外・休日労働をさせるには36協定は必要でしょうか?
 フレックスタイム制においても、当然に必要となります。なお、フレックスタイム制を採用した場合に時間外労働となるのは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間ですので、1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、清算期間を通算して時間外労働をすることができる時間を協定すれば足りるとされています。したがって、労基署に提出する協定届の1日の延長時間の欄は空白でかまいません。
(2013.6.3)

Q.フレキシブルタイムの前後の労働は、労働時間の計算のうえで、どのような扱いになるのでしょうか?
 働時間帯を超える労働については、
①清算期間内の総労働時間にカウントする
②時間外労働として扱い、清算期間の総労働時間数の状況に応じて、法定外または法定内の時間外労働と判断する
 という2つの考え方があります。行政の明確な見解はないため、どちらかを選択し、労使協定や就業規則等で定めておけばよいでしょう。一般には、①の考え方を適用する企業が多いと思われます。
(2013.6.3)

Q.フレックスタイム制における法定労働時間の総枠の特例とは何でしょうか?
 清算期間における曜日の巡りや労働日の設定の如何によっては、法定労働時間の総枠を超えるケースが出てきます。たとえば、30日の月で所定労働日が22日あるとき、1日8時間労働したとすると176時間となり、法定労働時間の総枠(40×30/7=171.4時間)を超えるというような場合です。法定労働時間を働いたにもかかわらず時間外労働が発生するのは不合理なことから、このような場合、以下の条件をすべて満たせば、法定労働時間の総枠を超えていても、当該時間に達するまでは時間外労働として取り扱われないという特例が認められています(平成9.3.31基発228号)。
 ①清算期間を1ヵ月とすること
 
②清算期間を通じて毎週必ず二日以上休日が付与されていること
 
③清算期間の29日目を起算日とする1週間の労働時間が40時間を超えないこと
 
④清算期間における労働日ごとの労働時間が概ね一定であること
 なお、この特例はフレックスタイム制にのみ認められているものであり、他の変形労働時間には適用できません。
(2013.6.3)

Q.フレックスタイム制において、清算期間内の労働者の実労働時間が所定の労働時間を不足したとき、この不足分を次の清算期間に繰越してもよいのでしょうか?
 月の実労働時間が所定労働時間を下回ったとき、当該月に所定の賃金を支給し、不足分を翌月に繰り越す「借り時間」の取り扱いは認められています。ただし、翌月の所定労働時間と借り時間の合計が法定労働時間の総枠の範囲内でなければなりません。
 
このため、労働時間の不足があった場合には、当該清算期間に欠勤控除として賃金カットをするのが実務的といえます。
(2013.6.3)

Q.フレックスタイム制において、清算期間内の労働者の実労働時間が所定の労働時間を超過したとき、この超過分を次の清算期間に繰越し、超過労働時間分だけ労働時間を少なくするという取り扱いをしてもよいのでしょうか?
 超過労働時間の次期清算期間への充当(いわゆる「貸し時間」)は、労基法24条の賃金全額払の原則に違反しますので認められません。
(2013.6.3)

Q.フレックスタイム制において休日労働をした場合、当該休日の労働時間は清算期間中の総労働時間に含めるのでしょうか、それとも、これとは別枠の休日労働時間として取り扱うのでしょうか?
 行政の見解は特になく、学説では、どちらの取り扱いでもかまわないと考えられています。あらかじめ労使協定で定めておけばよいでしょう。個人的な見解では、①フレックス対象外の労働者との均等待遇の観点からも時間外を含む労働時間と休日労働時間とは区別すべきこと、②休日労働割増賃金の支払いを確実にできること、の2点から別枠で管理したほうがよいと思われます。
(2013.6.3)

Q.フレックスタイム制においてコアタイムに遅刻した場合、①懲戒の対象としてもよいのでしょうか、②賃金カットしてもよいのでしょうか?
 ①については、コアタイムには労働義務があるため、就業規則に照らして懲戒対象とすることは可能です。
 ②については、コアタイムの欠勤をもって直ちに賃金カットをするのは妥当ではありません。コアタイムに欠勤があったとしてもフレックスタイムの労働で補うことができるからです。賃金カットするかどうかは、清算期間の総労働時間をもって判断すべきことになります。
(2013.6.3)

 時間外労働

Q.36協定特別条項を締結する場合には、月45時間と年360時間を超える労働時間に対する割増率を定めることが義務づけられますが、1年変形労働時間をとる事業所では、月42時間超、年320時間超の場合の割増率を定めなければならないのでしょうか?
 「限度時間」を超える時間外労働に係る割増賃金率を定めなければならないとされていますので、1年変形労働時間を採用している場合は、「月42時間超の場合○○%、年間320時間超の場合○○%」と定めることになります。
(2012.7.30)

Q.36協定届で「労働させることができる休日」に記載する休日数とは、法定休日のことでしょうか、それとも、会社が定める所定休日のことでしょうか?
 法定休日のことです。時間外労働休日労働に関する協定届(様式第9号)には、所定休日という欄があり、その右横に「労働させることができる休日」の欄があるため、まぎらわしいのですが、当該欄に記載する休日数は1週1日の法定休日のことです。つまり、この欄に「1ヶ月に2日」と記載したとすれば、1ヶ月に2日の法定休日労働をさせることができるという意味になります。
(2012.7.30)

Q.非常災害等の場合に、労働基準監督署長の許可を受けることで、時間外・休日労働をさせることができますが、この場合の「災害その他避けることができない事由」とは、どのような事態を指すのでしょうか?
 災害その他業務外の原因による事故で、通常その発生を予見できないものをいいます。具体的には、地震や火災、風水害、爆発事故、落盤などで、単なる業務の繁忙や通常予見される機械の修理・点検などは認められません。
(2012.7.30)