年次有給休暇に関するQ&A

 年次有給休暇の付与・付与日数

Q.年次有給休暇の算定にあたって、有給休暇取得日、生理休暇、慶弔休暇は出勤日となるのでしょうか?
 有給休暇取得日は出勤日とみなされます(昭和22.9.13発基17号)。生理休暇や就業規則等で定められた慶弔休暇等の特別休暇を出勤日とするかどうかは会社の自由です。
(2012.8.13)

Q.当社では、4月に入社した社員が8割以上の出勤要件を満たせば、10月から10日間の年次有給休暇を付与していますが、当該有給休暇の有効期間は翌年度(入社2年目)の3月までとしています。年次有給休暇の時効は2年と聞きましたが、当該取り扱いは違法となるのでしょうか?
 違法となります。ご指摘のとおり、労基法第115条により、年次有給休暇の時効は2年間ですので、権利は翌々年度の9月まで保障されます。 
(2012.8.13)

Q.パートタイマーの年次有給休暇は労働日数に応じて付与されることになっていますが、途中でパートタイマーの労働日数が変わったときの付与日数はどうなるのでしょうか?
 通達では、「(短時間労働者が、)年度の途中で所定労働日数が変更された場合、休暇は基準日において発生するので、初めの日数のままと考える(昭和63.3.14基発150号)」と示されており、次の基準日(=次の有給休暇の権利が発生する日)までは、以前の所定労働日数で計算した休暇を付与することになります。そして、次の基準日では、新たな所定労働日数に基づいて、休暇を付与することになります。 
(2012.8.13)

Q.60歳で定年退職した労働者を再雇用したときの年次有給休暇の取り扱いはどうなるのでしょうか?
 その労働者が、定年退職後、一定期間を置かず再就職をしたのならば、継続勤務していると考えて年次有給休暇の権利を付与する必要があります。
 
これについては、次の通達が示されています(昭和63.3.14基発150号)。

 
継続勤務とは、労働契約の存続期間、すなわち在籍期間をいう。継続勤務か否かについては、勤務の実態に即して実質的に判断すべきものであり、次に掲げるような場合を含むこと。この場合、実質的に労働関係が継続している限り勤務年数を通算する。
 
イ.定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再雇用している場合(退職手当規程に基づき、所定の退職手当を支給した場合を含む)。ただし、退職と再雇用との間に相当期間が存し、客観的に労働関係が断続していると認められる場合はこの限りでない。
 
ロ.法第21条各号に該当する者でも、その実態より見て引き続き使用されていると認められる場合
 
ハ.臨時工が一定月ごとに雇用関係を更新され、1年以上に及んでいる場合であって、その実態より見て引き続き使用されていると認められる場合
 
ニ.在籍型の出向をした場合
 
ホ.休職とされていた者が復職した場合
 
ヘ.臨時工、パート等を正規職員に切り替えた場合
 
ト.会社が解散し、従業員の待遇等を含め権利義務関係が新会社に包括承継された場合
 
チ.全員を解雇し、所定の退職金を支給し、その後改めて一部を再採用したが、事業の実体は人員を縮小しただけで、従前とほとんど変わらず事業を継続している場合
(2012.8.13)

 年次有給休暇の請求・取得

Q.社員から年次有給休暇の請求がありましたが、同時期に他の複数の社員から請求があったことから、全員に与えては業務遂行ができなくことを理由に、社員の請求を拒絶することはできるでしょうか?
 年次有給休暇の請求に対して、それを拒絶することはできません。できるのは時季の変更です。設問のような事情であれば、「事業の正常な運営を妨げる」と考えられるので、使用者は時季変更権を行使できると思われます。
(2012.8.13)

Q.私傷病で休職中の労働者が年次有給休暇の請求をしてきました。請求を認めないといけないのでしょうか?
 年次有給休暇を含め休暇というのは、労働義務があるにもかかわらず、使用者がその義務を免除する日を意味します。休職中であれば、そもそも労働義務がありませんので、年次有給休暇の取得の余地はないと考えられます。
 
通達でも、「休職発令により従来配属されていた所属を離れ、以後は単に会社に籍があるにとどまり、会社に対して全く労働の義務が免除されることとなる場合において、休職発令された者が年次有給休暇を請求したときは、労働義務がない日について年次有給休暇を請求する余地がないことから、これらの休職者は、年次有給休暇請求権の行使ができないと解する(昭和31.2.13基収489号)」と示されています。
 ただし、療養が必要となったが、とりあえず様子を見守るために年次有給休暇を取得するといった場合は、休職前の期間であり労働義務を免除されていませんので、年次有給休暇の取得は可能です。
(2012.8.13)

 年次有給休暇の計画的付与

Q.年次有給休暇の計画的付与により、事業場全体で一斉休暇を実施することになりましたが、このとき、年次有給休暇の権利のない労働者の賃金をカットすることができるでしょうか?
 年次有給休暇の権利のない労働者の立場からすれば、その意思に反して就労を拒否されたこととなるため、労基法第26条に定める休業手当の支給が必要となります。 
(2012.8.13)

Q.労使協定を締結して年次有給休暇の計画的付与を実施しようとしたところ、ある社員から、その日よりも別の日にしてほしいと要求がありました。計画的付与の場合も労働者の時季指定権を認めないといけないのでしょうか?
 計画的付与の場合は、労働者の時季指定権および使用者の時季変更権はともに行使できないとされています(昭和63.3.14基発150号)。したがって、労働者は計画的付与の内容に反対であっても、これに従う必要があります。
(2012.8.13)