就業規則、制裁に関するQ&A

 就業規則

Q.パートタイマー就業規則を作成しているところですが、始業・終業時間について、個々のパートタイマーとの雇用契約により多くのパターンがあります。就業規則では、それらすべてについて記載しなければならないのでしょうか
 就業規則の記載の仕方については、次のような通達があります(昭和63年3月14日基発150号、平成11年3月31日基発168号)。

一 同一事業場において、労働者の勤務態様、職種等によって始業及び終業の時刻が異なる場合は、就業規則に勤務態様、職種等の別ごとに始業及び終業の時刻を規定しなければならない。
二 しかしながら、パートタイム労働者等のうち本人の希望等により勤務態様、職種等の別ごとに始業及び終業の時刻を画一的に定めないこととする者については、就業規則には、基本となる始業及び終業の時刻を定めるとともに、具体的には個別の労働契約等で定める旨の委任規定を設けることで差し支えない。なお、個別の労働契約等で具体的に定める場合には、書面により明確にすること。
三 前2項の適用については、休憩時間及び休日についても同様である。

 したがって、「始業時間、終業時間、休憩時間については、○○を基本に、業務並びに各個人別に雇用契約においてこれを定める。」といった定め方で結構です。
 なお、基本モデルは、いくつか列挙するという形でも構いません。
(2012.10.15)

Q.労基法第90条において、就業規則を作成または変更したときには、過半数労働組合か労働者代表者の意見を聴かなければならないとされていますが、事業所に複数の労働組合があるときでも、過半数労働組合だけの意見聴取でよいのでしょうか?
 過半数労働組合だけの意見聴取でよいです。他の組合の意見を聴く必要は、労基法上はありません。
(2012.10.15)

Q.当社ではパートタイマーを使用していますが、パートタイマーは労働組合に加入していません。今般、パートタイマー就業規則を作成することになりましたが、パートタイマーが未加入の過半数労働組合の意見を聴くだけでよいのでしょうか? 
 法的な義務としては、過半数労働組合(ないときには労働者代表者)の意見聴取だけでよいです。ただし、パートタイム労働法第7条において、短時間労働者に係る就業規則の作成・変更をするときには、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くよう努めるものとするとあり、パートタイマー代表者の意見聴取の努力義務を課しています。あくまで努力義務ですが、実際に就業規則を有効活用していくうえでの必要性は高いので、ぜひ実施したいものです。
(2012.10.15)

Q.就業規則を周知させるには、どのような方法があるのでしょうか?
 労働基準法施行規則第52条の2では、周知の方法として、
①各作業場の見やすい場所へ掲示または備え付け
②書面の交付
③磁気ディスク等に記録し、労働者がパソコン等で確認できるようにすること
 を示していますが、これらに限らず、社員が就業規則を知りうる状態にすれば結構です。なお、③のパソコン等による場合は、次の2つの要件を満たす必要があります。
ア.各労働者に、就業規則等を電子的データとして取り出すことができるよう、電子機器の操作の権限が与えられていること。
イ.事業場における各労働者に対して、必要なときに就業規則等の内容を容易に確認できるよう、電子機器から電子的データを取り出す方法が周知されていること。
(2012.10.15)

Q.複数の事業所の就業規則を本社で一括して届け出る制度があると聞きましたが、どのような制度でしょうか?
 一定の要件を満たせば、本社と他の事業場(支社、支店、営業所、店舗など)の就業規則を本社で一括して届け出ることができます(就業規則一括届出制度)。
 一括届出をするための要件は次の3つです。
①本社の就業規則と他の事業場の就業規則が同内容であること
②事業場の数と同じ部数の就業規則と意見書を用意すること。なお、同じ労働基準監督署管内に複数の事業所がある場合は、監督署ごとに就業規則は1部でよい(意見書は事業所ごとに必要)。
③本社以外の対象事業場の名称、所在地および管轄監督署名を記した一覧表を作成すること
 留意事項として、次の2点があります。
ア.単一労働組合で本社・対象事業場の労働者の過半数が加入している組合において、全事業場の組合の意見が同意見であるときは、組合本部の意見書(正本)に「全事業場の過半数労働組合とも同意見である」旨を記載するとともに、その写しを対象事業場分添付することでも差支えないこと
イ.初めて届出を行う場合には、就業規則届出書たリスト等の欄外に「各事業場の就業規則は本社と同一内容である」旨を明記すること
(2012.10.15)

 制裁

Q.労働基準法第91条の制裁規定の制限では、減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならないとされていますが、1賃金支払期に複数の制裁があっても、減給の上限は賃金総額の10分の1になるということでしょうか?
 1賃金支払期に複数の制裁があっても、1賃金支払期の減給の上限は賃金総額の10分の1としなければならないのは、質問のとおりです。
 ただ、労基法第91条の規定は、減給額の総額の上限を定めたものではなく、あくまで1賃金支払期の上限を定めたものです。したがって、減給額の累計が1賃金支払期で消化できないときは、翌期以降の賃金に繰り延べることができます。 
(2012.10.15)

Q.減給による制裁は賞与からも可能でしょうか?
 減給による制裁は賞与からもできます。ただし、月例給与の時と同様、「1回の事由については平均賃金の2分の1、また、総額については、一賃金支払期における賃金、すなわち賞与額の10分の1を超えてはならない(昭和63.3.14基発150号)」とされています。 
(2012.10.15)

Q.1回の遅刻につき、平均賃金の10分の1を減給するという制裁措置は認められるのでしょうか?
 質問の措置は、就業規則に制裁としての定めがあれば可能です。就業規則の定めがなければ、遅刻の程度によることになります。たとえば、5分の遅刻に対して平均賃金の10分の1をカットするのは、賃金の全額払に違反するため認められません。逆に、1時間の遅刻であれば、平均賃金の10分の1のカットは可能でしょうが、これは制裁措置というよりはノーワークノーペイの原則に基づく措置といえます。 
(2012.10.15)