安全衛生に関するQ&A

Q.労働安全衛生法上の事業者は、労働基準法上の使用者とは異なるのですか?
 安衛法上の事業者は、法人であれば法人自体(代表者個人ではない)、個人事業であれば個人事業主を指し、労基法のように「事業主のために行為をする」役職者などを含みません。これは、「事業経営の利益の帰属主体そのものを義務主体としてとらえ、その安全衛生上の責任を明確にしたものである(昭和47.9.18発基91号)」と説明されています。
 
だからと言って、代表者個人や現場の責任者などが安衛法上の責任を免れるということではありません。安衛法第122条に定める両罰規定により、代表者等も罰せられることがあります。したがって、実務上は労基法の使用者の概念とほぼ同じで考えてよいでしょう。
(2014.2.10)

Q.労働安全衛生法上の労働者とはどのようなものですか?
 安衛法上の労働者は、労働基準法上の労働者と同じです(安衛法第2条)。すなわち、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者(労基法第9条)」を指します。ただし、労基法と同様に、同居の親族のみを使用する事業場に使用される者や家事使用人は対象外となります。
(2014.2.10)

Q.労働安全衛生法では、事業場の規模ごとに安全衛生管理体制が定められていますが、この事業場とは、企業全体のことですか、
それとも本社、工場や支店、営業所などの各事業所を指すのでしょうか?
 労働安全衛生法の適用単位である事業場とは、後者の意味になります。ただし、「規模が著しく小さく、組織的関連、事務能力等を勘案して一の事業場という程度の独立性がないものについては、直近上位の機構と一括して一の事業場として取り扱う(昭和47.9.18発基91号)」とされています。
 また、逆に、「同一の場所にあっても、著しく労働の態様を異にする部分が存する場合に、その部分を切り離して別個の事業場としてとらえることによってこの法律がより適切に運用できる場合には、その部門は別個の事業場としてとらえるものとする(同通達)」とありますので、ケースバイケースの対応が必要となる点にも留意したいです。
(2014.2.10)

Q.安全委員会・衛生委員会の人数は何人でもよいのでしょうか?
 安衛法上、人数の定めはありませんので、事業場の実態に応じて決めてかまいません。
(2014.2.10)

Q.労働災害が発生したことを受け、労働基準監督署からリスクアセスメントの実施を指導されました。リスクアセスメントとは、どのようなものでしょうか?
 リスクアセスメントとは、職場にある様々な危険の芽(リスク)を見つけ出し、災害に至る前に、先手を打って対策を施し、リスクの除去・低減を行い、労働災害の減少を図る手法のことです。
 リスクアセスメントの効果には、災害防止・減少の他にも、労災対策に関する費用対効果の向上、アセスメント参画による職場の安全意識やモチベーションの向上などがあります。具体的な手順などは、コンサルティングメニューの「リスクアセスメント導入支援」をご参照ください。
(2014.2.10)

Q.安全衛生教育を実施しなければならないのはいつでしょうか?
 実施のタイミングは次の5つです。
 ①雇入れのとき
 ②作業内容を変更したとき
 ③危険有害業務に就かせるとき
 ④危険有害業務に従事しているとき(努力義務)
 ⑤職長や労働者を指導・監督する者になるとき
(2014.2.10)

Q.勤務時間が正社員に比べて短いパートタイマーにも健康診断を実施しなければならないのでしょうか?
 原則として、パートタイマーやアルバイト等の短時間労働者であっても、安衛法第66条に基づき、次に掲げる健康診断を実施しなければならなりません。
 ①雇入れの際に行う健康診断及び1年以内ごとに1回、定期に行う健康診断
 ②深夜業など特定業務への配置替えの際に行う健康診断及び6月以内ごとに1回、定期に行う健康診断
 ③有害業務への雇入れ又は当該業務に配置替えの際及びその後定期に行う健康診断
 ④その他必要な健康診断
 ただし、①②については、次のア~ウのいずれにも該当し、1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である者が対象となります。
 ア.雇用期間の定めのない者
 イ.雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上使用される予定の者(特定業務従事者にあっては6ヶ月)
 ウ.雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上引き続き使用されている者
 また、ア~ウのいずれにも該当し、1週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の概ね2分の1以上である者は、実施することが望ましいとされています(平成19年10月1日基発第1001016号/職発第1001002号/能発第1001001号/雇児発第1001002号)。
(2014.5.21)

Q.当社は顧客対応のために当番制で深夜業務を行うこととしており、社員1人につき月に2日の割合くらいで当番が回ってきます。この場合も、6ヶ月以内に1回ごとの特定業務健康診断が必要となるのでしょうか?
 どれくらい深夜業務に従事すれば特定業務健康診断の対象となるかについて、法定の基準はありません。目安となるのは、深夜業務従事者の自発的健康診断(安衛法66条の2)で、これが認められる要件が6月間を平均して1月当たり4回以上とされていることから、これによるのも1つの考え方といえます。これに従えば、質問のケースでは特定業務健康診断は必要ありません。ただ、あくまで目安ですので、当該深夜業務の労働者の健康への負荷を総合判断したうえで、実施を決定すべきでしょう。  
(2014.3.3

Q.健康診断で異常所見が見られたときは、会社としてどのように対応すればよいのでしょうか?
 異常所見があると診断された場合は、健康診断の日から3ヶ月以内に医師から意見聴取をするとともに、その意見を健康診断個人票に記載しなければなりません(安衛法66条の4)。さらに、必要があると認める場合には、「就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置」、「作業環境測定の実施、施設または設備の設置・整備」、「医師の意見の衛生委員会等への報告」等を行わなければなりません(安衛法66条の5)。
(2014.3.3

Q.一定の長時間労働を行った者には医師による面接指導が必要と聞きましたが、具体的にどのような労働者が対象となるのでしょうか?
 対象となるのは、次の3つを満たす労働者です。
 ①時間外・休日労働が1ヵ月100時間を超えていること
 ②疲労の蓄積が認められること
 ③労働者が申し出ていること
 ①で、時間外労働時間だけでなく、休日労働時間も対象となることに注意する必要があります。労基法で定める労働時間の限度時間は、時間外労働時間が対象となるため、これを認識・把握している企業は多いと思いますが、面接指導制度の適用の際には、休日労働時間も加えて計算しなければならないということです。
(2014.3.3

Q.安全衛生法上、面接指導の努力義務がある場合とは、どのようなケースでしょうか?
 次の①または②の労働者が申し出を行った場合には、面接指導やこれに準じた措置を実施する努力義務があります。
 ①長時間労働(時間外・休日労働が1ヵ月80時間超100以内)により、疲労の蓄積が認められるか、または、労働者が健康上の不安を感じていること
 ②衛生委員会等により事業場で定めた基準に該当する労働者

 なお、面接指導に準じた措置とは、次のようなものがあります。
 ①保健師などによる保健指導
 ②チェックリストにより疲労度を把握し、必要な者に面接指導を実施
 ③事業場の健康管理について、事業者が産業医等から助言・指導を受ける 
(2014.3.3

Q.労働者死傷病報告はいつまでに提出すればよいのですか?
 死亡または休業4日以上の場合は遅滞なく提出することが求められます。状況にもよりますが、1週間から2週間以内には提出するようにした方がよいでしょう。
 休業1日以上3日以内の場合の提出期限は下記のとおりです。
 ●1~3月の災害 4月末まで
 ●4~6月の災害 4月末まで
 ●7~9月の災害 10月末まで
 ●10~12月の災害 翌年1月末まで 
(2014.3.3

Q.労働者死傷病報告の「災害発生の状況」欄はどのように記述すればよいのでしょうか?
 災害発生の状況を次のポイントにしたがって記せばよいです。
 ①どのような場所で
 ②どのような作業をしているときに
 ③どのような物または環境によって
 ④どのような不安全なまたは有害な状態があって
 ⑤どのような災害が発生したのか 
(2014.3.3

Q.派遣社員が労災に被災したときの労働者死傷病報告はどうなるのでしょうか?
 派遣元と派遣先の双方が所轄の労働基準監督署に報告することになります。派遣元は自社の管轄の労基署に提出することに注意をしてください。 また、派遣先は、労働者死傷病報告を提出したときの写しを遅滞なく派遣元に送付しなければなりません(労働者派遣法施行規則第42条)。
(2014.3.3