労働基準法の総則・雑則に関するQ&A

 総則

Q.労働基準法の適用除外となる同居の親族とは、どのような範囲になるのでしょうか?
 民法第725条により、常時生活を共にしている6親等以内の血族、配偶者(内縁関係は除く)および3親等以内の姻族となります。
(2012年7月4日)

Q.労基法第7条に定める公民権の行使とは、どのようなものを指すのでしょうか?
 公民としての権利とは、公職選挙の選挙権・被選挙権、最高裁裁判官の国民審査、地方自治法上の住民の直接請求などを指します。なお、訴権の行使は公民としての権利の行使にはなりません。
 公の職務とは、各種議会の議員、公職選挙の選挙立会人、裁判所の証人などの職務です。
 公民権の行使のために勤務しない時間について、有給とするか無給とするかは使用者の自由となります。
(2012年7月4日)

 
雑則

Q.当社では現在、就業規則を各事業場に備え付けています。今後は社内ネットワークによりパソコン上で閲覧できるようにするようにし、事業場での備え付けを廃止しようと考えていますが、このような取り扱いは認められるのでしょうか?
 労基法第106条では、就業規則や労使協定等の周知義務を定めています。パソコンでの閲覧に関しては、以下の2つの要件を満たせば、周知義務を果たしていると認められます(平成9年10月20日基発第680号)。
 ①各労働者に、就業規則等を電子的データとして取り出すことができるよう、電子機器の操作の権限が与えられていること。
 ②事業場における各労働者に対して、必要なときに就業規則等の内容を容易に確認できるよう、電子機器から電子的データを取り出す方法が周知されていること。
(2012年7月4日)

Q.当社では採用した社員の履歴書を保管していますが、退職時に処分してよいでしょうか?
 労基法第109条では、労働者名簿や賃金台帳を3年間保存することを規定していますが、履歴書は規定されていません。また、「雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類」も3年間の保存義務がありますが、履歴書がこれに該当するとはいえません。したがって、貴社の判断で処分が可能です。
 履歴書を保管しておく目的としては、社員の学歴・職歴等を在職中の異動配置管理に活用することや、経歴に虚偽があったときの証拠とするなどが考えられます。これらは社員が在職時に意味を持つものであることから、退職時には速やかに処分・返却するのが、個人情報保護の観点からも適切といえるでしょう。
(2012年7月4日)

Q.就業規則は従業員に周知させなければ、効力が発生しないことになるのでしょうか?
 多くの判例では、従業員に対する実質的な周知を就業規則の効力発生要件としています。実質的というのは、労働基準法106条や施行規則52条の2に定める方法に限定せず、何らかの方法で周知させるということです。労働契約法でも、労働契約の成立や変更に関して、就業規則を労働者に周知させている必要があることを定めています(労契法7条・10条)。とにかく、何らかの形で従業員に周知させなければ、就業規則は効力を発生しないと考えるべきでしょう。
(2013年9月24日)

Q.労働者名簿には、どのような内容を記載すればいいのでしょうか?
 労働者の氏名、生年月日、履歴のほか、性別、住所、従事する業務(常時30人未満の労働者を使用する事業においては不要)、雇入れの年月日、退職の年月日およびその事由(解雇の場合はその理由を含む)、死亡の年月日およびその原因です(労規則53条)。なお、これら以外の他の事項を記載しても差し支えありません。
(2013年9月24日)

Q.当社には、本社以外に地方に工場や営業所がありますが、全社の労働者名簿を本社で一括管理するというやり方でも構わないのでしょうか?
 労働者名簿は事業場ごとに調製される必要があります。事業場とは、事業に属する人的物的施設の存する場所的な範囲(昭和23.4.5基発535号)となりますので、基本的に工場や営業所ごとに作成する必要があります。 
(2013年9月24日)

Q.賃金台帳には、どのような内容を記載すればいいのでしょうか?
 氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜労働の時間数、基本給・手当その他賃金の種類ごとにその額、賃金の控除額です(労規則54条)。 
(2013年9月24日)

Q.労基法109条
に3年間の保存義務があるとされている「その他労働関係に関する重要な書類」とはどのようなものですか? 
 出勤簿・タイムカード等の記録、労使協定、退職関係書類、休職・出向関係書類、事業内貯蓄金関係書類などです。 
(2013年9月24日)

 Q.
労基法第114条に定められている付加金とはどのようなものですか? 
 付加金は、裁判所が、労働者の請求に基づいて、解雇予告手当の未払いなど一定の労基法上の違法行為を行った使用者に、未払い金額と同一額の支払いを命じるものです。付加金には、労基法の実効性を確保するために違法行為に対する制裁として、また、違法行為によって不利益を被る労働者への賠償としての性格があります。
(2013年9月24日)

Q.どのような場合に付加金の支払いは発生するのですか?
 
 付加金の支払いが発生するのは、①使用者が114条に定める違反をしたとき、②労働者が付加金請求をしたとき、③裁判所が付加金の支払いを命じたとき、の3つの要件をすべて満たしたときです。
 ①の違反とは、解雇予告手当、休業手当、時間外・休日・深夜労働の割増賃金、年次有給休暇の賃金の未払いです。
 また、②にあるとおり、労働者の請求が必要ですので、これがないのに裁判所が自らの判断で付加金の支払いを命じることはありません。 
(2013年9月24日)

Q.裁判所が付加金を命じるのは、どのような場合なのでしょうか?
 
 裁判所では、使用者による労基法違反の程度や態様、労働者が受けた不利益の性質や内容、労基法違反に至る経緯やその後の使用者の対応等を考慮して、付加金支払いの妥当性を判断します。
 判例では、一定額の時間外・休日割増賃金の支払いを行っている場合など、違法性・悪質性が高くない場合や、使用者の正確な労働法規知識の不足を考慮した場合、労基署の調査に協力的であったり、指摘後の改善対応が誠実であったりした場合などに、付加金の支払いを否定したものがあります。 
(2013年9月24日)

Q.労基法115条に時効の定めがありますが、時効の中断についてはどのように考えればよいのでしょうか?
 
 労基法では時効の中断についての定めはありませんので、民法の一般原則(145条~157条)に従うことになります。つまり、時効が中断されるのは、①請求、②差押え・仮差押え・仮処分、③承認、があったときです。 
(2013年9月24日)

Q.安全配慮義務違反による損害賠償請求権や、セクハラ・パワハラに対する損害賠償請求権などの時効も、労基法115条の定めにより2年となるのでしょうか?
  
 労基法115条は、労基法の規定による請求権の時効を定めたものです。ご質問の請求権は、労基法の規定に基づくものではなく、民法の債務不履行または不法行為によるものと考えられます。この場合、債務不履行であれば10年(民法167条)、不法行為であれば3年(民法724条)となります。 
(2013年9月24日)