2020/5/12

テレワーク普及後の仕事の変化

 新型コロナウイルスをきっかけにテレワークが一気に普及してきた。東京商工会議所が4月8日に発表した「新型コロナウイルス感染症への対応に関するアンケート」調査結果によると、「実施している」26%、「実施検討中」19.5%である。300人以上だと、「実施している」は57.1%と約6割にのぼる。これまで食わず嫌いで済ましてきたものを、否が応でも食べざるを得なくなった状況だ。

 そして、実際に食べてみると、意外と美味しい、いや、かなり美味しいというのが多くの体験者の感想のようだ。プライベートとの切り分けやセキュリティなどの問題も生じているが、生産性の向上や“痛勤”からの解放など、それを上回るメリットがあることを実感し、肯定的にとらえる向きが多い。
 テレワークの美味しさを知ったからには、コロナ騒動終息後にまた元に戻るとは考えづらい。規模や頻度の縮小はあるにしても、少なくとも制度としてこのまま採用を続ける企業が大半だろう。

 このようにテレワークという働き方は、今後、普及を続けることは間違いない。当然、仕事の仕方も大きく変化することになる。どのように変化するか、人事労務の視点からいくつか指摘してみよう。

1.上司の部下管理の仕方
 これまでのように、職場で気づいたときに声をかけ、仕事の進捗状況を確認していくという管理手法はではなく、部下のレベルや仕事内容に応じて適切なタイミング、手段、回数でのコミュニケーションが求められる。そのためには、部下の仕事内容はもちろん、性格や資質、プライベートの状況などをしっかり把握しておく必要がある。前提となるのは部下との信頼関係だ。信頼関係の有無が今まで以上にマネジメント成果を大きく左右する。

2.評価の仕方
 能力・行動・態度評価から成果重視になるのは間違いない。「何となく頑張っている」といったあいまいな評価から、目に見える具体的な成果が追及されるようになる。そこで必要なのは、成果とは何かの議論だ。組織目標や顧客満足、利益の獲得に向けて、どのような成果を積み上げればよいか。ただ、成果を過剰に細分化し、それぞれマイクロ・マネジメントをしていくようなやり方は、上司・部下双方の負担となる。ほどよいバランスを目指して試行錯誤が繰り返されるだろう。

3.時間管理の仕方
 当面、通常の時間管理をする企業が大半だろうが、上記の通り、マイクロ・マネジメントは避けたいので、「事業場外労働みなし制」が進むのではないだろうか。ただ、この制度も制限が多い。今般の働き方改革では葬られた裁量労働の規制緩和が、再び議論の俎上に乗ることになると予想する。

4.できる社員、できない社員の変化
 できる社員、できない社員が違った面で出てくる。テレワークで成果を上げるには、強い自己管理力や柔軟性、達成意欲などが求められる。従来の働き方でも、これらに秀でた人は“できる社員”が多いと思うが、テレワークによりその特長をさらに活かすことができる。一方で、社員それぞれの住宅事情や家族事情など、仕事環境の違いもある。どんなにテレワーク向きの適性があっても、環境要因が不向きであればパフォーマンスは低下せざるを得ない。社員個々の適性、環境要因によりテレワークに向かない人は、会社で働いたほうがよいだろう。企業としては、そういった選択肢を設ける必要がある。    
 

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